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 西は日本海に接し、東は出羽三山に守られた庄内藩十四万石の城下町「鶴岡」は、
情緒あふれる町並みと豊かな自然の中に歴史的建造物が多く存在し、また伝統文化・
伝統産業が脈々と受け継がれています。
 この鶴岡市からは数々の著名な作家を輩出していますが、その中でも時代劇小説の
鬼才・藤沢周平は全国的に熱烈な愛読者を持っています。
 その藤沢作品の多くは、ここ庄内藩をモデルとした架空の藩「海坂藩」を舞台として
います。

蝉しぐれ

 「五間川の川岸では、青草のいろが一日一日と濃さを増し、
春の到来は疑いがなかったが、その季節の流れを突然に
断ち切るように、日は終日灰いろの雲に隠れ、城下の町町を
つめたい北風が吹きぬける日があった。
 そういう日は、町なかを流れる五間川の川水に、総毛立つように
こまかなさざ波が立ち、人びとに季節が冬に逆もどりした印象を
あたえるものだった。
天神町のはずれにある文四郎の家を、前ぶれもなく布施鶴之助が
たずねて来たのも、そんな寒い日の午後だった。」

五間川のモチーフとなった内川

義民が駆ける

 「庭をへだてた向こうの棟から、少年たちの素読の声が
聞こえてくる。会所と同居している藩校致道館では、
いつものように授業が行なわれているようだった。
かすかなその声をのぞいて、建物は静まりかえっている。
建物の屋根のうしろに、薄もも色に染まった雲が浮かんでいる。
空気はまだ冷たいが、どこかに潤んだような気配を含んでいた。
 ――春だな。と松平は思った。」

庄内藩の学問所、藩校致道館

花のあと

 「水面にかぶさるようにのびているたっぷりした花に、傾いた
日射しがさしかけている。
その花を、水面にくだける反射光が裏側からも照らしているので、
花は光の渦にもまれるように、まぶしく照りかがやいていた。
豪奢で、豪奢がきわまってむしろはかなげにも見える眺めだった。
以登は去るにしのびないような気持ちになっている。
 これで、今年の花も見おさめかと、胸に小さく吐息をついたとき、
以登は背後に男の声を聞いた。」

海坂藩の城の風情を漂わせる鶴ヶ岡城跡

又蔵の火

 「 “勝負!”
  大声に告げると、丑蔵は羽織を脱ぎ捨て、すばやく袴の
股立ちをとった。又蔵を鋭く注視しながら、ゆっくりと刀を抜いた。
丑蔵の刀は藤原貞行銘の二尺五寸もので、又蔵の刀より二寸長い。
 この間に又蔵も、走ってさっき丑蔵が投げた自分の刀を拾い上げ、
抜き放っていた。敏捷な身ごなしだった。
又蔵は南の方、光学寺側の塀を背にして立ち、丑蔵は総穏寺脇の
蕎麦屋の側を背にして向き合った。

相打ちで果てた両義士の像

藤沢周平作品ゆかりの地18ヶ所には案内板が設置され、
訪れる人々を小説の舞台へと誘います。

◆金峰山…「臍曲がり新左」
◆高坂…「三月の鮠」
◆民田…「ただ一撃」
◆湯田川温泉…「花のあと」
◆井岡寺…「紅の記憶」
◆日枝神社…「ただ一撃」
◆内川(筬橋)…「蝉しぐれ」
◆総穏寺…「又蔵の火」
◆大督寺…「義民が駆ける」

◆七日町…「三屋清衛門残日記」
◆藩校致道館…「義民が駆ける」
◆鶴岡公園…「花のあと」
◆家中新町…「三ノ丸広場下城どき」
◆内川(三雪橋)…「蝉しぐれ」
◆大泉橋…「秘太刀馬の骨」
◆龍覚寺…「蝉しぐれ」
◆般若寺…「凶刃用心棒日月抄」
◆善宝寺…「龍を見た男」

藤沢作品ゆかりの地案内看板

山五十川(やまいらがわ)の玉杉

鶴岡市中心部から車で約1時間、ひっそりとした熊野神社。
その鳥居をくぐり237段の階段を登りきった正面に玉杉と呼ばれる大木があります。
遠方から見ると枝ぶりが半球状に見えることから、この名前が付いたと言われています。
高さおよそ40メートル、幹の太さ11メートル、樹齢約1500年。
この神社の御神木でもある玉杉は、国の天然記念物に指定され、地元では美しい風格から「日本一の玉杉」として親しまれています。

あつみ温泉「せせらぎの能」

毎年夏に、あつみ温泉街を流れる清流「温海川」の特設舞台で、山形に根差す伝統芸能が披露されます。
国指定重要無形民俗文化財「黒川能」や山形県指定無形民俗文化財「山戸能」の共演があります。
かがり火の中、特設水上野外ステージでの上演は大変幻想的です。

2013年の「山戸能」の様子を見られます→ビデオ


藤沢周平がこよなく愛した庄内悠久の味
日本一美味しいと評判が
高い「だだちゃ豆」
こんがり焼くと香ばしい
「口細ガレイ」
夏が旬の大振りな
「天然岩がき」
孟宗竹の筍ほかを味噌と
酒粕で煮た「もうそう汁」
遠い昔、北前船によって
伝えられた「南禅寺豆腐」
春の味覚、歯ごたえの
ある「月山筍」

日本三大砂丘のひとつで
採れる「庄内砂丘メロン」
寒鱈を丸ごと使い味噌で
仕立てる「どんがら汁」
腰のある歯応えとつるりと
した喉ごしの「麦きり」
徳川将軍への献上品にも
なった「温海かぶ」
秋の定番郷土料理
「芋煮」
昔ながらの漬け物にして
旨い「民田なす」
日本有数の米どころ庄内
平野で作られる「庄内米」
庄内平野の旨い米と出羽三山や朝日連邦からの
豊富な清水で作られる「庄内の地酒」
赤子を寒さから守る籠を
形取った「いづめこ人形」
35の工程を経て仕上げ
られる「竹塗漆器」
享和年間から伝えられる
光沢が見事な「絹織物」
手描きの図柄を華やかな
色彩で表した「絵ろうそく」
庄内藩の武家の女性に
より始まった「御殿まり」

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