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2006年2月掲載 規制緩和と自己責任
提言33 ~耐震強度偽装から~ 元相模原市議会議員
本間 俊三

売り上げ優先
 昨年秋に発覚したマンションにおける耐震強度偽装問題。購入者にとっては切実な問題であろうが、建築業界にとっても重大な課題をはらんでいる。
 建築物件の急増から、自治体の審査業務が増え、法で定める期限内に建築審査を下ろせない事態が発生。規制緩和の一環で民間に業務を開放したのが5年前だ。今では全国平均65%程度が民間、都市部ではほぼ100%民間で確認審査業務が行われているという。売り上げを伸ばし利益を上げるための営業活動が行われ、価格や審査期間の競争になっていて、じっくり審査するところは嫌われるようになった。(また、人材獲得のため、役所に勤める有資格者は引き抜かれ、業務に支障を来す自治体も出始めている。)

倒壊率が高かったのは…
 審査は建築行程の入り口の部分であって、業界の課題は多い。その一つが、設計管理と施工が一体であることである。これは外国では有り得ないことだという。日本ではそれが伝統であり、信頼関係を基盤に成り立っていた。しかし阪神淡路の震災においては、特定ゼネコンの建築物の倒壊率が異常に高かったことはあまり報道されていない。

モラルを失くした企業
 年が明けて、ライブドアによる株価操作や粉飾決算が発覚した。企業は利益を追求するものであり、これ自体悪いことではない。しかし、踏み込んではならない一線がある。ここに手を出せば儲かることは解っていても、ほとんどの企業はこの一線を越えない。自己のモラルが抑止力となっている。モラルを失った利益第一主義企業の行き着く先は犯罪である。そして、多くの市民を巻き添えにする。被害にあった市民を、自己責任として突き放して良いであろうか。
 耐震強度偽装問題を含む建築関連犯罪も、ライブドアによる犯罪も、経営者のモラルとともに法律や制度にも多くの問題点があった。多くの市民、国民を被害者とする企業犯罪、この増加をくい止めなければならない。これこそが政治の重要な目標でもあると思う。


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