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平成23年7月14日

火を使い始めた猿

本間 俊三

 昨今の福島第一原発の騒動と議論のやり取りを見ながらこんなことを思った。『同じような議論は百数十万年前にもきっとあった・・・』と。それは人類の祖先が初めて火を使ったときの議論もこれに似ていたであろうと想像したからである。

 消す術を知らなかった頃、火は危険で怖いものと受け止められた。それは獣や動物たちが火に対して感じる恐怖感に似ている。しかし、火の便利さは調理や夜間の獣除け、暖房・明かり・土器作りなどに発揮された。

 たびたび、突風が吹き集落は焼かれ仲間はけがをするなど大惨事を引き起こした。このようなときは村の長老や識者が、火は危険だ、使うべきでないと言いだしたと想像出来る。しかし、多くの犠牲を払い非難を浴びながらも、人類の祖先は危険であるが役に立つ火を使うことをあきらめなかった。原子炉は冷却で安全になるように、火は水を掛ければ消えることを知っていた賢い猿人は、ある時水を入れる壷を作り火のそばに置くことを思いついた。各地の古墳から発見される壷の中には消火用に使われた壷もあったと思うし、またそのことで火は更に安全なものとなった。このように火を安全に使う術を身に付けるだけでも、何万年もかかったことでしょう。

 原子力は火と違って規模も与える影響も比較にならないほど大きい。今の事態や議論を当時の失敗や犠牲を例にするには無理があるかもしれない。しかし未知の知識や技術を人類が手に入れようとするときのステップとしては共通のものがあると思う。

 この危険な火を使う術を身に付けた猿人は後に人類となったが、拒否した猿人がその後どうなったか私は知らない。


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